学会講演会のご案内

出版メディア論叙説、あるいは「出版考古学」 
   吉川一義先生のプルースト研究の学士院賞・恩賜賞によせて


 舌代 岩波書店で30余年の編集者を経て、退職後、女子短大で「出版メディア論」を講じることになった。以来、大好きな本造りの仕事も続けながらのありがたい8年間であったが、授業は自分の雑多な体験を省み、嚙みしめ、二次文献を読み、出版史と渡り合うものでしかありえなかった。年々荷が重くなるのは、これはまた当然であった。活版印刷がますます好きになり、版面、字体、本文用紙、また原稿用紙から出版流通までモノとしての本に連なるテーマばかりである。出版社の従業員時代とは異なった視点に立つようになったが、言ってみれば「出版考古学」といったところだろう。そんななかで、日本近代の出版検閲の勉強で、『岩波書店50年』を繙いていたとき、偶然、岩波文庫の「次版改訂処分」という刊行後の検閲が目に入った。文庫編集部には数年在籍し、異動後も退職まで何冊も企画を提案し、自分で担当・刊行した。いろいろな様子を体感的に承知している。「次版改訂」を被った岩波文庫を追いかけることにした。神田はもちろん、北から南まで日本全国の古書店の文庫の棚を、ほんとうに目を皿のようにして見た。今回は、幸い自分の架蔵となった改訂処分本のうちから、伊吹武彦訳のフローベール『ボヴァリー夫人』(上下)と福澤諭吉『文明論之概略』を中心として、幾冊かそれらの様態を紹介したい。時間があれば、第二次大戦後、私が生まれ育った街札幌で一瞬開花した「札幌版」についてお話できたらと思っています。取り上げる本がいずれも萎垂れたものばかりで恐縮ですが、外見に様子がよく窺えない出版社の気配をちょっとでもお伝えできれば幸いです。

 

講師:星野紘一郎氏(出版メディア研究室、共立女子短期大学非常勤講師)

日時:2012年5月26日(土) 15:30~

会場:日仏会館509会議室   東京都渋谷区恵比寿3-9-25

入場無料  事前申込不要

お問い合わせ:日仏図書館情報学会(日仏会館内)  fax:03-5421-7653